見えるリンゴへ直進しない。アジアゾウ16頭が“回り道を選ぶ自制”

見えるリンゴへ直進しない。アジアゾウ16頭が“回り道を選ぶ自制”
Photo: Sangpa Dittakul; Hope et al. (2026), PLOS One, CC BY 4.0

透明な箱の中に果物が見えます。正面には鼻が入りそうな穴がありますが、そこからは取れません。横の開口部まで回り込めるか――タイの施設で暮らすアジアゾウ16頭が、この「回り道課題」に挑みました。

ゾウたちは、目の前のご褒美へ衝動的に鼻を伸ばすのを抑え、学んだ横の入口を使い続けました。

透明な箱の横から果物を取るアジアゾウの実験
Photo: Sangpa Dittakul; Hope et al. (2026), PLOS One, CC BY 4.0

見えている近道を我慢する

実験では、穴の開いた透明な箱の横から果物を取る方法をまず学習させました。その後もゾウは正面の穴へ突進せず、開口部へ回りました。すぐ得られそうな行動を止め、目的に合う行動を選ぶ「抑制制御」を示したと研究者は考えています。

箱の向きを変えて入口を反対側へ移すと、ゾウは初め以前の場所へ向かうことがありましたが、新しい位置へ修正しました。覚えた反応に固執せず、状況の変化に対応できた形です。

年齢差は「可能性」の段階

年齢が高い個体ほど、入口の変更への対応が遅い傾向も報告されました。ただし対象は16頭で、飼育歴や経験など年齢以外の影響もありえます。この結果だけでゾウの認知老化を断定することはできません。

研究者は、障害物への反応を理解することが人とゾウの衝突を減らす柵づくりなどに役立つ可能性を挙げていますが、今回の実験自体が特定の対策の効果を示したわけではありません。

世間の反応

賢さは難問を解くことだけではありません。「今すぐ取りたい」を止め、少し遠回りする力も生活上の重要な認知能力です。大きな体のゾウが見せたのは、静かなブレーキでした。

おもせかの一言

目の前にリンゴがあっても、近道が正解とは限らない。ゾウの鼻先に自制心が見えました。

出典