メスが最大5匹から選ぶと“悪い変異”が減る。コクヌストモドキ156世代の実験

メスが最大5匹から選ぶと“悪い変異”が減る。コクヌストモドキ156世代の実験
Photo: Udo Schmidt / Wikimedia Commons, CC BY-SA 2.0

パートナーをめぐる競争は、集団の遺伝子を長期的に掃除するかもしれません。英イースト・アングリア大学などがコクヌストモドキを15年、156世代にわたって飼育した実験で、交尾相手を選べる集団ほど有害と予測される変異が少なくなりました。

数千匹を使った、昆虫だからこそ可能な世代をまたぐ進化実験です。

実験に使われたコクヌストモドキの成虫
Photo: Udo Schmidt / Wikimedia Commons, CC BY-SA 2.0

最大5匹のオスと1匹だけのオス

一方の集団ではメスが各世代で最大5匹のオスと交尾でき、オス同士の競争とメスの選択が働きました。もう一方ではメスとオスを一対一にし、性的選択がほぼ起きない条件にしました。

長期飼育後にゲノムを調べると、競争の強い集団では有害と予測される変異が少なく、全体の遺伝的多様性は競争の弱い集団と同程度に保たれていました。状態の良いオスほど繁殖に成功しやすく、傷のある遺伝子が次世代へ渡りにくくなった可能性があります。

近親交配への耐性にも差

その後に近親交配を重ねると、有害変異を多く抱えた系統ほど絶滅しやすくなりました。絶滅リスクをよく予測したのは交尾制度そのものより、集団に残った有害変異の量でした。「良い遺伝子」を選ぶ性的選択が集団を守るという仮説に、ゲノムからの証拠を加えています。

ただし対象は繁殖が速い実験室の甲虫です。絶滅危惧種に複数の交尾相手を与えれば必ず救える、という証明ではありません。大型動物では社会構造や飼育数、遺伝的偏りも考え、種ごとに慎重な検証が必要です。

世間の反応

競争は個体には厳しくても、長い時間では集団から有害変異を減らす選別装置になりえます。しかも今回、多様性を大きく失わずに“遺伝的な掃除”が進んだ点が注目されます。

おもせかの一言

156世代の恋愛競争は、恋の勝者だけでなく集団の未来まで選んでいました。

出典