足かせの79人は侵略者ではなかった? 歯が語る2,600年前の大量埋葬

足かせの79人は侵略者ではなかった? 歯が語る2,600年前の大量埋葬
Image: Journal of Archaeological Science: Reports (2026)

2016年、古代アテネ近郊のファレロン墓地で、紀元前7〜6世紀に埋葬された成人男性79人の遺骨が見つかりました。3つの集団墓に横たわり、多くは金属製の足かせでつながれていました。

外国から来た侵略者か、海賊か、反乱者か。さまざまな説が出ましたが、歯に残る化学的な“出生地の記録”は、意外な方向を指しました。

ファレロン墓地のストロンチウム同位体分析結果
Image: Journal of Archaeological Science: Reports (2026)

66人中64人が地元の値

米国とギリシャの研究チームは、ファレロンに埋葬された163人の歯を分析しました。その中には、集団墓の79人のうち66人が含まれます。

注目したのは、歯のエナメル質に含まれるストロンチウム同位体です。エナメル質は幼少期に形成された後ほとんど変化しないため、育った土地の地質や水、食べ物を反映します。

結果は、足かせの男性66人中64人、96.9%がアッティカ地方の値と一致。墓地全体でも163人中156人、95.7%が地元とみられました。集団墓だけが外国人で構成されていたとは考えにくく、「侵略者を処刑した」という説には不利な証拠です。

内部抗争か、犯罪者かは未解決

研究チームは、暴力が外から来た敵ではなく、地域社会の内側へ向けられた可能性を指摘します。当時の権力闘争や失敗した政変に巻き込まれた人々、あるいは見せしめとして処刑された地元の犯罪者だったのかもしれません。

ただし同位体が教えるのは、主にどこで育ったかです。名前、身分、罪状、誰が処刑を命じたかまでは分かりません。「地元民だった」は謎を一つ絞っただけで、事件そのものはまだ解決していないのです。

世間の反応

足かせと集団墓という強烈な光景は、つい一つの劇的な事件へ結び付けたくなります。今回の研究は、物語より先に測定値を置き、外国人説を静かに退ける考古学の進み方を見せています。

おもせかの一言

2,600年前の歯は、本人たちが語れなかった「私たちはここで育った」を残していました。次に知りたいのは、なぜ同じ場所で死ななければならなかったのかです。

出典