T・レックス「ガス」、5010万ドルで落札。世界一高い化石が残した宿題
ニューヨークの競売会場で、約6700万年前の王者が新しい記録を作りました。全長約11.5メートルのT・レックス化石「ガス」が、5,010万ドルで落札されたのです。

恐竜化石のオークション価格として史上最高。事前予想の2,000万〜3,000万ドルを大きく上回り、2024年にステゴサウルス「エイペックス」が記録した4,460万ドルも更新しました。
7人が10分間競り合った
ガスは2021年、米サウスダコタ州の牧場で発見されました。土地の所有者だったゲイリー・“ガス”・リッキング氏にちなんで名付けられ、2021年から2023年の夏に発掘。その後、岩から骨を取り出し、組み上げる作業が続きました。
2026年7月14日の競売では、会場、電話、オンラインから計7人が参加し、約10分間にわたって価格が上昇。最終的に電話参加の匿名の買い手が落札しました。
購入者が誰なのか、今後どこで保管・展示されるのかは明らかになっていません。
61%でも、かなりそろっている
ガスは立った状態で高さ約3.8メートル、長さ約11.5メートル。骨の個数で見ると全身の約61%が残り、骨の重さで見ると約80%に達します。頭骨も約82%が本物で、珍しい叉骨、つまり「恐竜の鎖骨」に当たる骨や、状態のよい両足も含まれます。
「61%」と聞くと半分近く足りないように感じますが、巨大な動物が死後に分解され、土に埋まり、数千万年後までまとまって残ること自体がまれです。特に頭骨や足など、研究上重要な部位がそろっている点が高く評価されました。
値段が上がるほど、博物館は買えない
記録的な価格は化石への関心の高さを示す一方、研究者を悩ませます。科学研究では、ほかの研究者が同じ標本を再確認できることが重要です。個人所有になると、将来も継続して観察できる保証がありません。
脊椎動物古生物学会は、ガスのように科学的価値の高い化石は、博物館や研究機関で保存・公開されることが望ましいと表明しました。所有者が協力的でも、売却や相続で状況が変わる可能性があります。研究論文でも、第三者が再検証できない個人所有標本は扱いにくくなります。
過去の高額化石は、公開された例もある
高額落札された化石が、必ず個人宅へ消えるわけではありません。前記録のエイペックスは、ニューヨークのアメリカ自然史博物館に長期貸与されています。
1997年に当時の最高額で落札されたT・レックス「スー」はシカゴのフィールド博物館、2020年に3,180万ドルで落札された「スタン」はアブダビ自然史博物館で展示されています。
ガスも公開されれば、購入資金が民間から出ても、研究と教育へつなげられます。落札額より長く注目されるのは、買った人が次に何をするかです。
世間の反応
海外では、5,010万ドルという金額と骨格の迫力に驚く声が広がる一方、「人類共通の自然史が富裕層の収集品になるのでは」と心配する意見も出ています。発掘を支える民間市場の役割と、研究標本の公共性をどう両立するかが議論になりました。
出典
- AP News: https://apnews.com/article/tyrannosaurus-trex-dinosaur-auction-sothebys-new-york-577c0c039df3852f742e26c03063d688
- Sotheby’s: https://www.sothebys.com/en/videos/gus-the-t-rex-crushes-world-record-for-dinosaur-at-auction
- Guinness World Records: https://www.guinnessworldrecords.com/news/2026/7/gus-the-t-rex-roars-into-the-record-books-after-securing-unprecedented-auction-bid
- Smithsonian Magazine: https://www.smithsonianmag.com/smart-news/this-t-rex-fossil-could-fetch-the-largest-sum-of-any-dinosaur-ever-auctioned-scientists-worry-theyll-lose-the-chance-to-study-it-180989114/
おもせかの一言
史上いちばん高い恐竜になったガス。値札は決まりましたが、本当の価値は、これから何人の子どもと研究者が会えるかで決まりそうです。