1枚に重なったX線写真を“2コマ動画”へ。750兆分の1秒後を分離した新手法

1枚に重なったX線写真を“2コマ動画”へ。750兆分の1秒後を分離した新手法
Illustration: ETH Zurich

ナノ粒子の変化を動画にしたくても、X線検出器は超高速の二つの瞬間を別々には記録できません。そこで国際研究チームは、色の異なるX線パルスを時間差で当て、一枚に重なった回折パターンを計算で二つへ分ける「Dichography」を開発しました。

同じ粒子の50フェムト秒後と750フェムト秒後などを、2コマの像として再構成しています。1フェムト秒は1,000兆分の1秒です。

2色のX線パルスから二つの瞬間を再構成するDichographyの概念図
Illustration: ETH Zurich

X線の“色”で重なりをほどく

欧州XFELでは、波長の異なる二つのX線パルスを同じ方向から、調整可能な時間差で発射できます。各パルスが試料に作る散乱模様は検出器上で重なりますが、波長によって模様の広がり方が違います。

研究者はこの違いと粒子の形に関する制約を利用し、キセノンを含む超流動ヘリウムのナノ液滴を二つの時点へ分離しました。最初の照射後もキセノン構造が最大750フェムト秒残ることを示す像が得られました。

何でも撮れるカメラではない

別の論文では、事前の形状モデルに頼らず重なったパターンを分ける方法も検討されています。将来は分子反応や材料変化を、破壊される前の超短時間で追う用途が期待されます。

ただし現在のDichographyは間接撮影で、測定値からアルゴリズムが像を復元します。実験では十分明るく、二つの信号強度が近い一部の良好なデータだけが処理できました。普通の動画のように連続した多数のコマを直接撮影したわけではありません。

世間の反応

速いカメラを作る代わりに、混ざった写真を後からほどく発想です。「750兆分の1秒後」は短く見えても、原子や分子の動きには変化が起きる長さです。

おもせかの一言

シャッターが追いつかないなら、写真を重ねてから謎解きする。超高速撮影はカメラよりパズルに近づきました。

出典