19分も陸上に居残り。産卵ウミガメから離れなかったコバンザメ

19分も陸上に居残り。産卵ウミガメから離れなかったコバンザメ
Photo: Megan Bullock / Frontiers in Marine Science

コスタリカの夜の浜辺で、産卵のため海から上がってきたヒメウミガメ。その甲羅には、海の“無料タクシー”を利用する魚が付いたままでした。

甲羅にコバンザメを付けたまま上陸したヒメウミガメ
Photo: Megan Bullock / Frontiers in Marine Science

魚の正体はコバンザメの仲間。海中でサメやクジラ、ウミガメなどに吸着して移動することで知られますが、今回は宿主と一緒に陸まで上がり、19分間も離れませんでした。

甲羅の上で、えらを動かし続けた

観察が行われたのは、コスタリカのオサ半島にあるペヘペロ海岸です。2025年9月24日午後10時29分、産卵調査中のスタッフが、甲羅に大きなコバンザメを付けたメスのヒメウミガメを見つけました。

研究チームは赤いライトの下で観察を継続。推定約28センチのコバンザメはほとんど動かなかったものの、時折えらぶたを動かしていました。ウミガメは通常どおり産卵の準備を進め、コバンザメを特に気にしている様子はなかったといいます。

甲羅の幅を測るため、19分後にスタッフが魚を外して海へ戻すと、コバンザメは身をよじり、すぐに泳ぎ去りました。長く水を離れていたものの、まだ活発に動ける状態でした。

頭の「吸盤」は、背びれを作り替えたもの

名前に「サメ」とありますが、コバンザメはサメの仲間ではありません。頭の上にある小判形の吸着盤で、大きな海の生き物や船体などに付きます。

この吸着盤は、もともと背中にあった背びれが変化したものです。水の流れを利用して強く張り付き、乗せてもらうことで移動に使うエネルギーを節約します。宿主の食べ残しを利用することもあり、まさに海のヒッチハイカーです。

「初めて」ではないが、かなり珍しい

研究論文によると、産卵するウミガメと一緒にコバンザメが上陸した例は、フランス領ギアナやメキシコでも報告されています。したがって、魚が陸へ出た世界初の記録ではありません。

それでも、毎年多数のウミガメが産卵するなか、同じ光景の記録はごくわずかです。今回の観察では、陸上にいた時間、魚の動き、ウミガメの行動まで詳しく記録できました。コバンザメと宿主の関係が、単なる短時間の“乗り合い”より長く続く可能性を考える材料になります。

見つけても、外すのは調査員に任せたい

写真だけを見ると、甲羅から魚を取ってあげたくなるかもしれません。しかし野生動物への接触は、産卵中のウミガメを驚かせるおそれがあります。今回も、訓練を受けた調査スタッフが計測の必要から対応しました。

珍しい場面に出会っても、距離を保ち、現地の保護スタッフの指示に従うのが基本です。ヒッチハイカーが降りる場所は、人間が勝手に決めないほうがよさそうです。

世間の反応

海外では「魚が自分からここまで付き合うとは思わなかった」「19分も水の外で動けることに驚いた」と、この組み合わせが注目されました。研究者自身も、これほど長く陸上にとどまり、海へ戻した直後に活発に動いたことを意外に感じたと説明しています。

おもせかの一言

海の無料タクシーに乗ったら、終点がまさかの砂浜。降りどきを逃したコバンザメ、19分間だけ“陸の魚”になりました。

出典

  • Frontiers in Marine Science: https://www.frontiersin.org/journals/marine-science/articles/10.3389/fmars.2026.1840078/full
  • Discover Wildlife: https://www.discoverwildlife.com/animal-facts/marine-animals/sea-turtle-remora