低体温で動けなかったウミガメ「パンケーキ」、約8か月後に海へ帰る

低体温で動けなかったウミガメ「パンケーキ」、約8か月後に海へ帰る
Image: Mary Dixon / Wildlife Conservation Society

米ニューヨーク・コニーアイランドの浜辺で、見物客から「パンケーキ!」の大合唱が起きました。主役は食べ物ではなく、絶滅危惧種のケンプヒメウミガメ。約8か月の治療を終えた「パンケーキ」が、大西洋へ帰る瞬間でした。

大西洋へ戻るケンプヒメウミガメのパンケーキ
Image: Mary Dixon / Wildlife Conservation Society

パンケーキが見つかったのは2025年11月22日。米マサチューセッツ州ケープコッドの海岸で、寒さのため体が動かなくなる「コールド・スタニング」の状態でした。

海水温が下がると、泳げなくなる

ウミガメは周囲の温度に体温を左右される変温動物です。海水温が急に下がると代謝や心拍が落ち、泳ぐことも食べることも難しくなります。ケープコッドは腕のように海へ張り出した地形のため、南へ移動しようとするカメが湾内に迷い込み、冷たい海に取り残されることがあります。

パンケーキは救助後、ニューイングランド水族館で緊急治療を受け、12月3日にニューヨーク州の海洋保護団体の施設へ移されました。そこから数か月、泳ぐ力と食欲を取り戻すリハビリが続きました。

回復後はエビや貝を追って食べ、力強く泳げるまでに。放流時の体重は約11ポンド、約5キロで、年齢は2〜5歳と推定されています。若いため外見から性別を判断できず、治療に不要な血液検査もしなかったため、性別は不明のままです。

午後1時13分、海へ一直線

2026年7月23日午後1時13分、パンケーキはニューヨーク水族館前の浜から放されました。当初は7月16日の予定でしたが、大気質警報のため延期されていた放流です。

砂浜に置かれると、集まった人たちの声援を受けながら海へ進み、そのまま波の中へ。背中には衛星発信器が取り付けられ、最大90日ほど移動を追跡する計画です。放して終わりではなく、その後の行動も保全研究のデータになります。

ケンプヒメウミガメは、現生のウミガメで最も小さい種です。1匹の帰還で危機が解決するわけではありませんが、救助を始めた人、治療した人、海岸を見守る人の連携が、確かに1匹を海へ戻しました。

世間の反応

現地で名前を連呼する動画には、「映画のエンディングのよう」「海へ入った瞬間に泣いた」といった反応が寄せられました。親しみやすい名前と、迷わず波へ向かう姿の組み合わせも、多くの人の心をつかんだようです。

おもせかの一言

パンケーキは焼き上がるのではなく、泳ぎ上がりました。次の目的地は衛星だけが知っています。

出典