一つの小惑星に“三つの世界”? ニサの横には1キロの月もいた
一つの小惑星に見えて、実は三つの天体がそっと寄り集まった姿かもしれない。火星と木星の間を回る小惑星「ニサ」の鮮明な地上観測画像に、三つの膨らみと、その横を回る直径約1キロの小さな月が写りました。

正式には「(44) Nysa」と呼ばれるニサは、直径約75キロ。小惑星帯でも特に明るいE型小惑星で、エンスタタイトという鉱物に富む表面を持ちます。細長い、二つの塊かもしれないなど、形をめぐる議論が100年以上続いてきました。
くびれが二つ、膨らみは三つ
ローウェル天文台を中心とするチームは、米アリゾナ州の大型双眼望遠鏡にあるSHARK-VISと、チリの超大型望遠鏡にあるSPHERE/ZIMPOLを使用。大気の揺らぎを補正する補償光学と画像処理を組み合わせ、探査機に近い品質の像を地上から得ました。
画像には、小惑星の周囲を巡る二つの深い谷が見えました。研究者は、別々の天体が低速で接触したときにできる「首」の部分と解釈しています。正しければ、三つの塊からできた接触三重天体として初の例です。
二つの天体が合体した接触二重天体なら、ゴム製アヒルのようなチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星や、雪だるま形のアロコスが知られています。ニサは、それを三つで行ったような姿です。
小さな月が、正体を量ってくれる
別の可能性もあります。ニサは一枚岩で、巨大衝突によって深い溝を刻まれ、たまたま三つの塊に見えているだけかもしれません。それでも似た形の天体は知られておらず、十分に珍しい姿です。
決着の助けになりそうなのが、新しく見つかった衛星候補「S/2026 (44) 1」です。直径は約1キロで、ニサから少なくとも170キロ離れて周回しているとみられ、別々の二回の観測で確認されました。
衛星の軌道を追えばニサの質量がわかり、画像から求めた体積と合わせて密度を計算できます。密度が低ければ、衝突破片がゆるく集まった構造を支持します。小さな点の動きが、大きな本体の内部を量る物差しになるのです。
なお研究は現在、査読前のプレプリントです。三重構造も衛星の軌道も、追加観測で確かめる必要があります。
世間の反応
「三つの世界」という表現は魅力的ですが、三つの独立した惑星があるわけではありません。三つの塊が接して一つの小惑星になった可能性を示すものです。確定前だからこそ、衛星の追跡観測が次の見どころになります。
おもせかの一言
本体は三つで一つ、横には小さな月。ニサは一個と数えるべきか、宇宙の数え方まで少し迷わせます。