宇宙の洗濯機は“銃”になる? 水なしで服の菌を減らすプラズマ装置
月や火星へ向かう宇宙船では、服を洗う水も洗剤も貴重です。そこで米アラバマ大学ハンツビル校とNASAの研究者は、冷たいプラズマを布へ吹き付け、細菌を減らす手持ち装置を開発しています。愛称は「ランドリーガン」。ただし、コーヒーの染みは落ちません。

地上の洗濯機は大量の水を使い、すすぎと乾燥にもエネルギーが必要です。国際宇宙ステーションでは通常、衣類を洗って再利用せず、着用後に廃棄物とともに処分します。しかし数か月から数年に及ぶ深宇宙飛行では、交換用の服を運び続けるのは大きな負担です。
空気と水蒸気から、菌を壊す粒子を作る
試作装置は、ヘリウム、空気、水蒸気などから低温プラズマを発生させます。プラズマは正に帯電したイオンと高エネルギーの電子を含む状態です。
電子が酸素や水分子へ衝突すると、オゾンやOHラジカルなど反応性の高い酸素種が生まれます。それらが細菌の脂質膜を酸化して傷つけ、布に付いた微生物の量を減らします。水槽に衣類を沈めなくても、表面を衛生的に保てる仕組みです。
対象は服だけでなく、寝具、布張りの家具、宇宙服、工具など。閉鎖された宇宙居住区で微生物が増えるのを抑えたり、火星へ地球の菌を持ち込まない「惑星保護」に使ったりする構想があります。
これは洗濯より「除菌」に近い
研究者が強調するのは、装置が汚れを落とすわけではないことです。汗の成分、皮脂、ほこり、食べこぼしや染みは布に残ります。見た目も手触りも新品には戻らず、「洗濯機」というより水を使わない除菌器に近い技術です。
実用化には、広い布面を均一に処理できる大型の手持ち装置が必要です。処理中に生じるオゾンを安全に取り除き、布を傷めず、乗員が吸い込まない設計もしなければなりません。現時点では研究室の試作段階で、宇宙飛行に採用された装置ではありません。
それでも電気、空気、少量の水分から消毒成分をその場で作れるなら、補給物資を減らせます。同じプラズマ技術は、水処理、廃棄物分解、宇宙農業、月や火星の土の処理にも応用が検討されています。
世間の反応
「宇宙の洗濯問題を解決」と聞くと、何週間も同じ服を新品同様にできそうですが、菌と汚れは別物です。長期ミッションでは、除菌に加えて臭い、皮脂、繊維の劣化をどう管理するかも必要になります。
おもせかの一言
未来の宇宙飛行士は、洗濯物を回さず撃つかもしれません。ただし食べこぼしたケチャップには、プラズマもお手上げです。