地下1.6キロで「説明できない1発」。暗黒物質かもしれないが、まだ発見ではない

地下1.6キロで「説明できない1発」。暗黒物質かもしれないが、まだ発見ではない
Image: Matthew Kapust / Sanford Underground Research Facility

米サウスダコタ州の地下約1.6キロに置かれた暗黒物質検出器「LUX-ZEPLIN(LZ)」が、既知の物質による背景信号では説明しにくい反応を1件捉えました。

暗黒物質の直接検出かもしれない――そんな期待を抱かせる結果ですが、研究チーム自身は「暗黒物質を見たとは主張しない」と強調しています。残ったのは、あくまで1個の異常なデータ点です。

地下施設で組み立てられるLUX-ZEPLIN検出器
Image: Matthew Kapust / Sanford Underground Research Facility

10トンの液体キセノンで待つ

暗黒物質は光を出したり吸収したりしないため、望遠鏡では直接見えません。LZは高純度の液体キセノンを使い、暗黒物質の候補WIMPがキセノン原子核へぶつかった際の、ごく弱い発光と電気信号を探します。

今回解析したのは2023年3月から2024年4月までの稼働220日分。従来より高いエネルギー領域まで探索を広げたところ、既知の放射線や中性子などでは説明しにくい、約248キロ電子ボルトの反跳が1件残りました。

もしWIMPによるものなら、その質量は陽子の200倍以上に相当する可能性があり、最も単純なWIMP像とは異なる相互作用を示唆します。

2.6シグマは「発見」ではない

結果の統計的有意性は2.6シグマ。既知の背景現象だけでも、同程度以上の偏りが生じる確率は約0.5%と推定されました。低く見えますが、素粒子物理で発見を名乗る目安の5シグマには遠く及びません。

極端に珍しい未知の背景現象、装置に関する見落とし、単なる統計的な揺らぎの可能性も残ります。LZは観測を続け、似た事象が増えるか、それとも今回の1件だけで消えていくかを確かめます。論文も現時点では査読前のプレプリントです。

世間の反応

「ついに暗黒物質を発見」という言い換えは早すぎます。ただ、異常値を簡単に捨てず、装置と背景を何か月も検討して公開したこと自体が、次の探索範囲を示す重要な材料です。

おもせかの一言

宇宙の大部分を占める謎が、たった一度だけ地下でノックしたのか。それとも家鳴りだったのか。答えには、次のノックが必要です。

出典