プラスチックもペニシリンも食べる“パックマン酵素”。環境細菌から発見

プラスチックもペニシリンも食べる“パックマン酵素”。環境細菌から発見
Image: AG Schleheck / The ISME Journal

口を大きく開けたような構造で、プラスチックを切り刻む。ドイツ・コンスタンツ大学の研究チームが、環境細菌から“パックマン酵素”と呼ぶ新しい酵素を発見しました。

この酵素は一部のポリエステル系プラスチックだけでなく、ペニシリン系抗生物質も分解します。ごみ処理への期待と同時に、環境中の抗生物質耐性がどう進化するかという別の問題も浮かび上がりました。

活性中心が大きく開いたパックマン酵素の構造
Image: AG Schleheck / The ISME Journal

広く開いた活性中心

酵素の名称はSse1。分子を取り込んで反応させる活性中心が大きく開いているため、研究者はゲームキャラクターになぞらえました。

実験室では、ポリエステル系の材料や生分解性プラスチックの結合を切断しました。同じ酵素がβラクタム環を持つペニシリン系薬剤も壊し、細菌に耐性を与えることが確認されました。

海や土壌のプラスチック表面には微生物の膜「プラスティスフィア」が作られます。そこでプラスチックを利用できる酵素が選ばれる一方、似た化学結合を持つ抗生物質まで分解する能力が同時に生まれる可能性があります。

すべてのプラスチックを消すわけではない

今回分解できたのは特定のポリエステルやバイオプラスチックで、ポリエチレンなど大量に使われるあらゆる合成樹脂を処理できるわけではありません。研究室の反応が海洋ごみの大規模処理へ直結するわけでもありません。

また、分解酵素を環境へ広げればよいという単純な話ではなく、耐性遺伝子の拡散や分解生成物、生態系への影響を確認する必要があります。基礎研究として、プラスチック分解と薬剤耐性を同じ酵素が結びつけた点が重要です。

世間の反応

“プラスチックを食べる酵素”は希望のニュースに見えますが、同じ能力が抗生物質を無力化するなら評価は二面性を持ちます。自然界のリサイクル機構は、人間に都合よく一つの仕事だけをしません。

おもせかの一言

パックマンはごみだけでなく薬まで食べてしまいました。便利な大食いには、メニュー管理が必要です。

出典