脳の幹細胞は“糖の使い方”と“隣からのタッチ”で進路を変える

脳の幹細胞は“糖の使い方”と“隣からのタッチ”で進路を変える
Image: Claudia Nguyen, Aparna Bhaduri Lab / UCLA

胎児期の大脳皮質を作る幹細胞「放射状グリア」は、遺伝子の指示だけで将来を決めているわけではないようです。UCLAの二つの研究は、糖をどう処理するかと、視床から伸びてくる神経線維に物理的に触れることが、どの細胞へ変わるかを左右する可能性を示しました。

栄養と“タッチ”という別々の情報が、思考や記憶を担う皮質の組み立てに関わるという結果です。

視床由来と皮質由来のオルガノイドを融合して神経発生を調べる実験モデル
Image: Claudia Nguyen, Aparna Bhaduri Lab / UCLA

糖は燃料だけでなく進路標識

Cell掲載の研究では、妊娠初期の提供組織31試料と幹細胞由来の脳オルガノイドなどから、発達中の皮質の代謝地図を作りました。糖を分解する解糖系やペントースリン酸経路の活動を操作すると、放射状グリアの成熟や生み出される細胞の構成が変化しました。

つまり代謝は単にエネルギーを供給する裏方ではなく、細胞の運命を調節する信号でもある可能性があります。ただし母親の食事を変えれば子どもの脳を操作できる、と示した研究ではありません。

視床の神経線維が直接触れる

Science掲載の別研究では、皮質と視床のオルガノイドを融合した「アセンブロイド」を使用。視床の軸索が外側放射状グリアへ接触すると、上層の興奮性ニューロンが増えました。接触にはNRXN1という分子が関わり、これを欠損させると効果が弱まりました。

人の解剖学的観察と実験モデルを組み合わせた成果ですが、子宮内で発達する脳をそのまま観察したものではありません。オルガノイドは血管や全身環境を完全には再現せず、病気の治療法が直ちに生まれたわけでもありません。

世間の反応

「脳は遺伝子だけで作られる」という単純な図ではなく、代謝状態と離れた脳領域からの入力が組み立て工程へ参加する姿が見えてきました。人とげっ歯類の違いについても、今後の直接比較が必要です。

おもせかの一言

脳が考え始めるずっと前、脳を作る細胞たちも糖と隣人の合図を読んでいました。

出典