透明な稚魚の“全身会話”を同時撮影。脳・筋肉・内臓の細胞が一斉に光る

透明な稚魚の“全身会話”を同時撮影。脳・筋肉・内臓の細胞が一斉に光る
Photo: Toby Hayman / HHMI

脳、心臓、腸、筋肉は別々の器官に見えても、体の中では絶えず信号を送り合っています。その全身の会話を、細胞レベルでほぼ同時に見る撮影システム「WHOLISTIC」が開発されました。

対象は体が透明なゼブラフィッシュの稚魚。泳ぐ、食べる、休むといった行動中に、脳から内臓までの活動が光として記録されます。

WHOLISTICでゼブラフィッシュを観察する顕微鏡実験
Photo: Toby Hayman / HHMI

ほぼ全細胞のカルシウム信号を追う

細胞が活動すると変化するカルシウムを蛍光センサーで可視化し、高速の立体顕微鏡で全身を撮影します。動く魚の細胞を追い続ける計算処理と、撮影後に組織を拡大して細胞の種類を確かめる手法も組み合わせました。

低酸素状態では、血流が腸から脳や筋肉へ振り向けられ、脳幹がその調整に関わる様子が観察されました。長く動かない時間には脳室を覆う上衣細胞の周期的な活動が見つかり、睡眠との関係を調べる新しい手がかりにもなります。

意外な場所も環境を感じる

温度変化に反応する軟骨細胞や、麻酔薬ケタミンに反応する髄膜の活動など、従来は一つの臓器だけを見る実験では見落としやすい反応も捉えられました。全身を同時に見ることで、原因候補を最初から脳だけに限定せずに済みます。

ただし「ほぼ全細胞」であり、文字どおり全細胞を完全に記録したわけではありません。透明な稚魚で得た結果を人間へ直接当てはめることもできず、同時に動くことは因果関係の証明ではありません。研究チームは透明な成魚を持つ別の魚への展開も検討しています。

世間の反応

臓器ごとに切り分けてきた生物学を、再び一匹の動物としてつなぎ直す装置です。「体のどこが最初に反応したか」を全身映像から探せることが強みになります。

おもせかの一言

透明な小魚の中で、脳も腸も筋肉も同じ物語を演じていました。主演は一つの臓器ではなく全身です。

出典