1億年前の甲虫、光って匂いも追った? 琥珀に残った二刀流
ホタルのように光り、ガのように匂いを追ったのかもしれない。約1億年前の琥珀に閉じ込められた小さな甲虫から、腹部の発光器と、複雑に枝分かれした触角が同時に見つかりました。古代昆虫の恋愛や防御が、一つの化石に凝縮されています。

中国科学院などの研究チームが調べたのは、ミャンマー産のカチン琥珀に残る甲虫です。新属新種として「Icaroramus」を含む学名が与えられ、すでに絶滅した発光甲虫の一群、クレトフェンゴダ科に分類されました。
12節の触角に、二種類の枝
最大の特徴は触角です。全体は12の節に分かれ、そのうち第4節から第11節には、形の異なる二対の枝が並んでいます。甲虫でこの組み合わせが確認されたのは初めてだといいます。
触角の枝が増えると、空気中の化学物質を受け取る表面積も広がります。現代の昆虫では、オスがメスの放つ性フェロモンを遠くから探すため、羽毛状や櫛状の触角を発達させる例があります。Icaroramusも、匂いを手がかりに相手を探していた可能性があります。
一方、腹部には左右一対の発光器がはっきり残っていました。発光器官を持つ白亜紀の甲虫化石は知られていましたが、これほど特殊な触角と同じ個体で確認できたことが重要です。
光は求愛か、警告か
現代のホタルは光を求愛信号として使うことで有名です。ところが、光で相手を探す種類では、触角が比較的単純なこともあります。逆に、複雑な触角でフェロモンを追うなら、光は「私はまずい」「毒がある」と捕食者へ知らせる警告だった可能性があります。
つまり、相手探しは匂い、防御は光という役割分担です。ただし、絶滅種の行動を化石だけから直接見ることはできません。光が求愛にも使われた可能性や、オスとメスで形が違った可能性も残っています。
樹脂に閉じ込められたおかげで、硬い殻だけでなく細い触角や腹部の構造まで立体的に保存されました。一匹の体から、白亜紀にはすでに昆虫の通信手段がかなり多様化していたことがうかがえます。
世間の反応
「光る甲虫」と聞けばホタルを思い浮かべますが、光の用途は求愛だけとは限りません。今回の化石は、現代の一つの例をそのまま過去へ当てはめず、触角と発光器をセットで読むおもしろさを示しています。
出典
- Chinese Academy of Sciences: https://english.cas.cn/newsroom/research-news/202607/t20260729_1179346.shtml
- Phys.org: https://phys.org/news/2026-07-cretaceous-beetle-fossil-reveals-early.html
おもせかの一言
1億年前の小さな甲虫は、光と香りの二回線を装備していました。古代の森も、見えないメッセージで混み合っていたようです。