分子を“結晶スポンジ”に泊めて撮影。100マイクログラムの未知物質まで立体化
形を知りたい分子を、穴だらけの結晶へ泊めて動けなくし、X線で立体構造を読む。東京科学大学などのチームは、分子に合わせて孔が伸び縮みする新しい「結晶スポンジ」APF-40を開発しました。
従来は難しかった分子量500以上の大型医薬分子を、マイクログラム単位の試料から解析。市販イベルメクチンに含まれる100マイクログラムほどの未知類縁体も特定しました。

孔が客に合わせて形を変える
通常の単結晶X線解析では、調べたい物質そのものを良質な結晶にする必要があります。結晶スポンジ法は、あらかじめ整った金属有機構造体の孔へ試料分子を入れ、スポンジごと回折させます。
APF-40には約1ナノメートル幅の通路と水素結合ネットワークがあり、客分子の大きさに合わせて拡張・収縮します。12種類の医薬分子を解析し、最大では分子量899、非水素原子64個のドラメクチンについて絶対立体配置まで決めました。
未知のエチル・イベルメクチン
液体クロマトグラフィー、質量分析、核磁気共鳴と組み合わせ、市販試料に微量に含まれる類縁体を調査。その中から未報告のエチル・イベルメクチンを構造決定しました。
ただしこれは薬の効き目や安全性を示した研究ではありません。すべての大型分子を無条件で捕まえられるわけでもなく、孔との相互作用や試料の純度に左右されます。創薬候補や天然物を“見る”ための分析技術です。
世間の反応
分子を結晶化できないなら、結晶のホテルへ入れてしまう発想です。宿泊客に合わせて部屋まで広がることで、微量で複雑な分子の住所と向きが読めます。
出典
- Journal of the American Chemical Society: https://doi.org/10.1021/jacs.6c08312
- Institute of Science Tokyo: https://students.isct.ac.jp/ja/news/ussy1b0lf9if
- Phys.org: https://phys.org/news/2026-09-crystalline-sponge-reveals-large-molecules.html
おもせかの一言
化学のスポンジは液体を吸うだけではありません。分子を泊め、X線撮影の間だけポーズを取らせます。