ブドウの搾りかすが“次の肉”へ? ミズアブ幼虫の食品化研究
ワインを搾った後のブドウ、オリーブ油を採った後の果肉、売り物にならないバナナの皮。捨てられがちな農業副産物を幼虫に食べてもらい、その幼虫を人の食料へ変えられないか。オーストラリアで、アメリカミズアブを使った循環型食品の研究が始まっています。

取り組むのはアデレード大学と、昆虫生産や食品に関わる企業・団体です。アメリカミズアブの幼虫はさまざまな有機物を短期間で食べて育ち、たんぱく質や脂質を蓄えます。すでに動物飼料への利用が進んでいますが、今回の焦点は人向け食品です。
幼虫の栄養は「何を食べたか」で変わる
初期分析では、幼虫は肉類に比べられる量のたんぱく質を含み、オメガ3脂肪酸やオメガ6脂肪酸も持つと報告されています。ただし、昆虫の栄養成分は餌によって変わります。
そこで研究チームは、オリーブやブドウの搾りかす、発酵させたバナナの皮など、異なる副産物を与えた場合に、たんぱく質、脂質、ミネラルの組成がどう変わるかを調べます。捨てるものの組み合わせを変えて、食品として望ましい栄養へ近づけられるかがポイントです。
大量の水や広い放牧地を必要とする家畜に比べ、昆虫は小さな面積で育てやすいと期待されています。廃棄物を餌にできれば、処分にかかる負担も減らせます。とはいえ、環境負荷は飼育設備の電力、乾燥や粉末化、輸送まで含めて比較しなければなりません。
「高たんぱく」だけでは食卓に出せない
最も大切なのは安全性です。農業副産物に残る農薬、重金属、植物由来の天然毒素などが、幼虫の体内に蓄積しないかを測る必要があります。細菌やアレルギーのリスク、加工時の衛生管理も検討対象です。
研究で供給された幼虫は管理された条件で育てられていますが、現時点で人の食用として生産されたものではありません。人向けに販売するには、飼料用とは別の厳しい生産基準と規制当局の承認が必要です。
最初から姿のまま皿に盛るより、乾燥粉末やたんぱく質原料としてパン、麺、栄養食品などに混ぜる形が現実的かもしれません。研究の目的も、すぐ新商品を売ることではなく、将来の基準作りに必要なデータをそろえることです。
世間の反応
昆虫食では見た目の抵抗感が話題になりがちですが、実用化を左右するのは味だけではありません。原料の追跡、安全な餌の範囲、アレルギー表示、環境負荷の実測まで、普通の食品と同じように地道な仕組み作りが必要です。
おもせかの一言
搾りかすを食べた幼虫が、今度は人のたんぱく源になる。食物連鎖というより、食品ロスのリレー選手です。